UNIKO

Drag Queen

February 24, 2008

category : Story

My first lover become a Drag Queen...

初恋の人がドラァグ・クイーンになった...

彼は、大学受験のために通っていた予備校の先輩だった。私は高校生で、彼は予備校生。私は夜間生で、彼は昼間生。彼を見ることができるのは、夕方、生徒の入れ替えがあるほんの一瞬だった。遅い初恋は、叶うはずのない恋だった。

その日のことは忘れもしない。
日曜日に行われる予備校の模試の日、整理番号を手に座席を探すと、私の座席には彼が座っていた。2度程、自分の手にしている整理番号と彼の座っている座席の番号を確かめたが、やっぱり私の席だった。私は思い切って、彼に声をかけた。そこ、私の席なんです、と。彼は、参考書からふっと顔をあげ、私の目を見つめ、次に自分の整理番号を確認した。そして、恥ずかしそうに会釈をし、隣の席に移動した。

その日のテストは気が気じゃなかった。しかし、いつもより良い点数をとれたことを憶えている。

次の日から、夕方の生徒の入れ替えの時間、彼は私とすれ違うたびに軽く会釈をするようになった。そのたびに、耳が熱くなるのがわかった。そしてある日、彼に声をかけられた。

彼がはじめに誘い、次に私が誘った。そうして、私達は2度デートしたが、3回目は誘われなかった。受験の時期が近づき、なんとなく疎遠になってしまったことを理由に、私も3回目は誘わなかった。

同じ年に、彼と同じ大学に入学し、4年間を過ごした。時々、学校内ですれ違うと、彼はやっぱり軽く会釈した。すれ違うときは、いつも会釈だけ。4年間、私達は一度も会話を交わさなかった。私自身、それが当たり前のような気がしていた。彼もきっと同じ気持ちだっただろう。

卒業して間もなく、彼が新宿二丁目で働いていると、予備校時代の友人から聞いた。

大学を卒業して5年たち、私はそれからふたりの男性と恋愛をした。ふたりめの男性との恋が終わった次の日、予備校時代の友人からライブに誘われた。彼がママになった記念の、ライブだった。

舞台の上の彼は、私の知っている"彼"とはまるで違っていた。スパンコールが隙間なくちりばめられたドレスを身にまとい、大きな羽のついたテンガロンハットをかぶり、私よりも美しく化粧を施し、胸も少しふくらんでいた。

スポットライトを浴びてシャンソンを歌う彼は、美しかった。涙があふれた。

ライブが終了し、会場の外に出ると、彼は出てくるお客さんひとりひとりに挨拶をしていた。私は彼と言葉を交わすことが怖かった。もう、何年も彼と言葉を交わしていなかったし、彼は"彼"ではなくなってしまったし。でも、彼の前をを通らなければ外に出ることはできなかった。

順番が近づくにつれて、ファンの子と会話する彼の言葉が聞こえてきた。言葉遣いは、女性そのものだった。あらぁ、きてくれたのね、嬉しいわ。

そして、私の順番が来たとき、彼は目をまんまるにして私を見つめた。

彼はひとこと。

「おっす、久しぶりやん。」

私はきっと、拍子の抜けたような顔をしていただろう。彼の声は、今まで裏返ってた声とは違い、まさに男性の声だった。それを聞いて、隣にいた私の友人がふっと笑った。それにつられて、私も、そして彼も笑った。

後で友人から聞いた話。
彼が女性とデートしたのは、私が最初で最後、ひとりだけだったそうだ。3回目のデートに誘わなかった理由は、女性を好きになってしまいそうだったから。私は、会釈をする彼の横顔を思い出しながら、友人に気づかれないように、そっと微笑んだ。

comments ( 1 )

[ kaeru_bakubaku ] : February 26, 2008 7:08 PM

『彼』の変貌ぶりには思わず笑ってしまいそうでした。彼の言葉は嬉しさと同時に切なさがありますね。この後、『私』は彼の心を氷解させるのか、それとも一本通行の片思いをするのか、それとも何ともないのかなど、ついついその後を想像してしまう作品でした♪

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